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【4 組織の状況】
組織はQMSの有効性よりも、ISO9001の認証やQMS構築が目的となり、意外と形骸化している場合が多くみられます。形骸化していなくとも有効性の度合いが評価できていない場合もあり、その様な事象を防ぐため、QMSの境界を明確にし、組織の目的、経営戦略を踏まえた外部、内部の現状及び将来的な課題の明確化を要求しています。
例)学校の場合
外部課題:少子化 内部課題:教員の高齢化
【4 .2 利害関係者のニーズ及び期待の理解】
組織は顧客だけに注視すると、「近視眼的」な姿勢になる可能性があり、持続的な発展を妨げる可能性があります。ここでは「供給側」と「需要側」の利害関係者を明確にした後、その要求事項を「6 計画」のインプット材料とし、「9 パフォーマンス評価」「9.3 マネジメントレビュー」の要求事項を満たすことで、製品及びサービスを安定して継続的に実現・提供でき、組織の発展に寄与する事を意図しています。
【4 .3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定】
適用範囲は提供する「製品」及び「サービス」を明確にし、内外部の課題や利害関係者の要求事項を考慮して決定する必要があります。具体的には、組織が提供する製品及びサービスをベースに競合や市場などの外部課題、組織能力などの内部課題が挙げられ、顧客や利害関係者の要求事項を明確にすると、これらに係る組織に必要なQMSが必然的に決まりISO9001:2015の適用範囲となります。また、要求事項において「適用除外」という表現は廃止され、「適用できるものは全て適用する事」(ただし、恣意的な非適用は禁止)が要求されています。すなわち、「8.3設計・開発」では、例えば製造だけ請け負っている組織は、製品設計は組織の権限がおよばないため適用したくても適用できず、適用しなくても顧客要求に関する組織能力にも影響を与えないため適用できなという事になります(適用除外という表現ではありません)。
【4 .4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス】
4.4では組織のQMSの「全体の骨格」を規定しており、箇条5以降に具体的な製品及びサービスに関するQMSが規定されています。また、4.4.2では「文書化した情報」に関する要求事項があり、a)がマニュアル・手順、b)が記録に対応します。文書化の程度はISO9001:2015では「組織が判断する」事になっており、判断基準は「必要な程度」とあります。製品・サービスの品質の保証に文書化が必要かどうかについて「プロセスが運用できるか」、「計画通りに実施できるか」などの観点から決めていきます。要するに「組織が必要」と判断した文書は作成し、「不要」と判断した文書は根拠があれば作成する必要はないという事になります。
【5 リーダーシップ】
箇条5ではリーダーシップ、コミットメント、方針、目標、役割、責任などの明確化を要求しています。トップマネジメントの積極的な関与を促し(形骸化防止)、効果的な運用を実現するためにリーダーシップは必要不可欠な要素になります。また、5.1.1c)で要求される「組織の事業プロセスへの品質マネジメントシステム要求事項の統合を確実にする」とは、ISO9001:2015の要求事項を主体で考えるのではなく、既存の事業プロセスを主体に考え、その中でISO9001:2015の要求事項を埋め込む、という意図があります。
【5.1.2 顧客重視】
顧客重視は、5.1の中で独立した細分箇条として設けられています。これは、QMSの成否を考えるうえで「顧客重視」が持続的成功を達成している組織の共通原則になり、QMSの根幹になるためです。5.1.2 b)では、顧客満足を向上させる能力に影響を与えるリスクに対するトップマネジメントのリーダーシップ及びコミットメントを要求しています。
「方針」は、文書化された情報として利用可能な状態にし、組織に伝達・理解・適用する事を要求しています。方針とは、トップマネジメントにより正式に表明したQMSが進むべき方向を示した、いわば「羅針盤」の役割を果たします。また、b)で要求する品質目標は、方針に沿って活動し達成する目標を部門やプロセスに展開したものとなります。
【5.3 組織の役割、責任及び権限】
組織のQMS活動において、だれが何を実施するのか(責任者)を明確にし、権限を委譲し、それを組織内に周知する事を要求しています。
【6.1 リスク及び機会への取り組み】
QMSは単独で機能するものではなく、組織のビジネス環境と相互に影響しながら機能します。6.1では箇条4.1で明確にした「内外部の課題」、「利害関係者の要求事項」の中のQMSで取り扱う事項をその「重要度」に基づき決定する事を要求しています。リスクとは「不確かさの影響」のことであり、将来起きる可能性を秘めており、QMSのあらゆる側面に潜在しています。一方、機会とは既に明らかになっている事柄で目的達成のために有利な状況・事態を述べています。リスクが起因となる仕組みの脆弱性を排除することで、安定した仕組みの構築が可能となり、より良い計画が立案できる事を目指しています。リスク及び機会は漫然と列挙するのではなく、ビジネス環境に着眼し、大局的にとらえる事が重要です。
※ISO9001:2015で要求されている「取り組むべきリスク」とは、残留リスクの管理を含むリスクマネジメントの仕組みではありません。
【6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定】
組織の目的達成のための具体的行動として、測定可能な品質目標設定、達成計画を要求しています。測定可能とは、必ずしも「数値的」に計測可能(定量的)でなければならないことはありません( 次e)項で決定します)。また、計画策定においては、a)何を実施するのか、b)実施するのに必要な資源は何か、c)だれが責任者なのか、d)何時までに実施するのか、e)結果はどのように評価するのか、を決定する事を要求しています。
【6.3 変更の計画】
どの様に精密に計画を策定しても、組織は、何らかの理由でQMSを変更せざるを得ない状況に直面する事が多々あります。6.3はそのような場面において、一時的あるいは部分的であってもその有効性を失わないよう、QMSの変更における要求事項を規定しています。
【7 支援】
QMSを効果的に運用する為には、運用の為の「基盤」の整備が不可欠です。ISO9001:2015では、7.1「資源」、7.2「人々」(力量)、7.3「認識」、7.4「コミュニケーション」、7.5「文書化した情報」を必要不可欠な基盤として、要求事項を規定しています。
【7.1.4 プロセスの運用に関する環境】
プロセスの運用効果は、整備された環境度合に比例します。7.1.4では、プロセスを適切に運用するために、a)社会的要因、b)心理的要因、c)物理的要因の観点において環境の整備を要求しています。
【7.1.5 組織の知識】
プロセスの運用を効果的に行い、製品、サービスに適合させるには、個人(社員)が経験を通して獲得した「知識」を組織全体で利用できる形でまとめ、共有される必要があります。社内で誰でも利用できる様にまとめられた知識は「組織の知識」であり、「固有技術」とも呼ばれます。7.1.5では「組織の知識」を明確にし、変化するニーズや環境変化に応じて足りない部分を補充する為の方法を規定する事を要求しています。環境変化が激しい近年においても緩やかな変化をともなう部分もあり、「ゆでガエル現象」の防止や「イノベーションジレンマ」の防止、「リッチな情報」を取得しやすい体制など、柔軟な組織体制の構築の必要性を意図しています。
【7.2 力量】
7.1.5では組織の知識について要求しているのに対して、7.2ではブレイクダウンした形で個人の知識を含む力量について要求しています。組織が必要な個人に対しての力量確保のため、どのような取り決めが有効か、教育訓練や配置転換、外部調達も含め幅広い対応をすることで、長期的な視点で人を有効に活用することが可能になります。
【7.3 認識】
ISO9001:2015では、全社員参加の必要性をより強く訴えています。7.3では組織が社員に対して品質方針や目標、QMSに本人がどのように貢献しているのか、QMSのルールを守らなかったらどのようになるのかを認識させることを要求しています。その後、次節の7.4コミュニケーションにより周知させる事で、全社員参加の要求を強化しているといえます。
【7.5 文書化した情報】
ISO9001:2015の大きな変更点として「文書化」に関する要求事項が挙げられます。ISO9001:2008では文書化する事項が明示化されていたのに対し、ISO9001:2015では多くの文書化した情報は「組織が必要と判断したもののみ」といったように、組織主導での判断に任されています。ISO9001:2008では「マニュアルや手順などを「紙ベース」で保持していない」「品質マニュアルに印鑑を押してない」という事で「不適合」を出したとんでもない審査員が存在したことも事実ですが、文書化した情報は「あらゆる形式の媒体」で作成可能であることも明確にしています。
【8 運用】
箇条8は、QMSのPDCAサイクルにおけるDoを規定しています。QMSに限らず、すべてのマネジメントシステムはDoを効果的に進めるためにPCAが存在します。「D」はQMSの根幹であり、ISO9001:2008では「製品実現」に相当します。
【8.1 運用の計画管理】
8.1は、Doにおいて事業の運用の「詳細計画」に焦点をあてており、「個々の製品及びサービスの提供」の提供に焦点をあてた、より具体的な要求をしています。
【8.2 製品及びサービスに関する要求事項】
顧客の要求を正確につかむことは、製品及びサービスを提供するうえで非常に重要な条件です。その為にISO9001:2015 8.2では、8.2.1「顧客とのコミュニケーション」、8.2.2「製品及びサービスに関する要求事項の明確化」、8.2.3「製品及びサービスに関する要求事項のレビュー」の3つを要求しています。顧客が「何を望んでいるか」の情報を獲得し、製品企画会議などで「明確化」し、実際に製品・サービスを提供した顧客は「満足しているか」の評価する為の具体的なプロセスをQMSの中に設けることを要求しています。
【8.3 製品及びサービスの設計開発】
製品・開発の主な機能は、顧客が「要求した仕様」を決めることであり、この仕様が適切・妥当でないと良い製品・サービスの提供はできません。これを確実にするために8.3では、8.3.1一般において一般的な要求をしめし、8.3.2以降で計画、インプット、管理、アウトプット、変更という主要な設計・開発の段階についての要求事項を規定しています。
【8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理】
組織は製品及びサービスを提供するため、外部から何らかの形で提供を受けます。8.4では外部からの提供をa)外部から組織へ、b)外部から顧客へ、c)プロセス、機能への外部委託の3つに分けて管理し、外部提供者の評価、再評価の基準方法の確立などを要求しています。外部から提供されるプロセス、製品及びサービスには購買、購入、外部委託、業務請負の様々な形態が含まれます。
【8.5 製造及びサービス提供】
8.5では、「製造及びサービス」を組織が「顧客の要求」を反映して顧客へ提供するための要求事項を@製造及びサービス管理、A識別及びトレーサビリティ、B顧客又は外部提供者の所有物、C保存、D引き渡し後の活動、E変更管理という6つの視点から規定しています。
【8.5.3 顧客及び外部提供者の所有物】
組織は製品及びサービスを提供する過程で、顧客や外部提供者の所有物を取り扱う場合があります。そのような場合の管理上の注意事項を8.5.3では要求しています。具体的には、識別、検証、保護、防護、紛失や損傷があった場合の処置方法を要求しています。
【8.6 製品及びサービスのリリース】
8.6では、顧客に製品及びサービスを確実に提供する場合、提供までのプロセスの安定化、品質の確認を要求しています。また、「引き渡し」とは「顧客に製品及びサービスを提供する」ことを意味し、「リリース」とは「製品及びサービスを顧客や後工程に引き渡すための活動の完了を確認すること」を意味しています。
【8.7 不適合なアウトプットの管理】
製品及びサービスを提供する場合、どのように綿密に計画しても不適合は少なからず発生します。ここでは、そのような不適合を発見するためのルール及び発見した場合の対処方法の「修正」について要求しています。修正とは「直面している不適合の現象を取り除くこと」であり(部品の取り替えなど)、是正処置とは、「不適合に至った原因を探し、再発防止に取り組むこと」を意味します。
【9 パフォーマンス評価】
QMSのPDCAサイクルにおいて「C;CHECK」に相当します。9 パフォーマンス評価では、一般事項を9.1 「監視・測定・分析及び評価」で、QMSの有効性を9.2「内部監査」で、QMSの継続的な有効性の評価・確実にするために9.3「マネジメントレビュー」で、それぞれ要求しています。
【9.2 内部監査】
内部監査は、「現在のレベル及び状態」を確認することです。監査で抽出された「問題」は9.3マネジメントレビューへのインプットとして、QMSの有効性の改善に活用されます。
【10 改善】
QMSのPDCAサイクルにおいて「A;ACT」に相当し、箇条9までに明らかになった「不適合事項」、「未達の目標」に対して適切な改善を実施する事を要求しています。更に10.3 継続的改善では、QMSの「適切性」、「妥当性」、「有効性」の「継続的」な改善を要求しています。
※ ISO9001:2015規格要求事項(2008年度版対比)はこちら
※ ISO9001:2015用語の解説はこちら
※ ISO9001:2015コンサルティングサービスはこちら
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